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大学礼拝「恐れず迎えよ」2020/12/10

カテゴリー:大学礼拝

【マタイによる福音書第1章18‐21節】
イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが明らかになった。
夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。
このように考えていると、主の天使が夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。
マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」

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 ヨセフとマリアは婚約していました。ところが、結婚前に、マリアに子どもができます。しかも、結婚前にヨセフとマリアは関係を持っていませんでした。ヨセフにとっては大変なショックでありましょう。ヨセフから見れば、婚約者ではない、誰か別の人とマリアが関係を持ち、その人との子どもが、婚約者であるマリアのお腹の中にいるわけです。裏切られたと思ったことでありましょう。
しかし、ヨセフとしては、まずもって心配になったのは、マリアの命です。マリアのお腹にいる子どもが婚外子であることが表沙汰になれば、マリアは律法に違反した者として、晒し者になって、石打ちの刑に処せられるかもしれません。結婚相手の愛するマリアがそのようなことになることは耐え難い苦痛に他なりません。また、仮に処刑されなかったとしても、母子ともに、これからずっと様々な差別を受けることになります。
また、ヨセフは、マリアのお腹にいる子の、自分ではない本当の父親について思い巡らします。他人の子どもを自分の子どもすることは、その人の父親としての権利を奪うことにもなってしまいます。そこで、ヨセフは、マリアが恥をかくことがないように、内密にマリアとの婚約関係を解消し、その本当の父親とマリアが結婚することを望んだようです。
しかし、聖書によれば、マリアは聖霊によってみごもったのであり、ヨセフも天使によって、そのことを知らされます。天使はヨセフに言います。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」
この言葉を聞いたヨセフは、すべてを受け入れるのでした。
それから、イエスが生まれるに至るまで、マリアもヨセフも、世間から白い目で見られていたかもしれません。当時としては、世間的、この世的、常識的に考えれば、マイナスだらけ、傷だらけのカップルだったかもしれません。しかしながら、マリアもヨセフも、神が自分たちと共におられることを信じ、そして「恐れるな」と神から告げられたことに寄り頼んで、そうした周りからの目をはねのけるようにして、ついに男の子を出産し、その子にイエスと名付けました。
このように、クリスマスとは、世間から見放されたり、傷つけられたり、白い目で見られたりする、そのような人々の中で、救い主が生まれる、という出来事です。マイナスだらけ、傷だらけに見えるものの中に神の恵みがあるという、この世の常識を突破する出来事です。
クリスマスがまもなくやってきます。今、傷つけられたり、人から見放されたりしている人々に、そして今、ここにいる私たちに、天使が告げたように、「恐れるな」と、神様が勇気づけられておられることを覚え、クリスマスを待ち望みたいと思います。
(チャプレン 相原太郎)


押し花

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