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2017/11/8 大学礼拝 「胸の泉に」

カテゴリー:大学礼拝

【マルコによる福音書4:30-32】
4:30 更に、イエスは言われた。「神の国を何にたとえようか。どのようなたとえで示そうか。
4:31 それは、からし種のようなものである。土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、
4:32 蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」

神様の国はからし種のようなもの。土に蒔く時には、地上のどんな種よりも小さいが、蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作ることができるほど、大きな枝を張る。

わたしの小さな、からし種のような出来事を、今日はお話ししたいと思います。私は20代の時、自分の進路に悩み、苦しんでいました。ある時、ボランティア募集の広告を見て、近くにある福祉施設を訪問しました。

天気は薄曇りで、小雨が降っていました。広い敷地には物音もせず、静まり返っていました。私は帰ろうとしました。その時、

「こんにちは。どこから来たの。また来てね」

と声をかけてくれた方がいました。その方は知的なしょうがいをお持ちの方でした。手を差し出してくださるので、私も手を握り、「また来ます」と言いました。

帰宅後、「また来る」という約束をしてしまった…と思いました。約束を思い返し、もう一度その施設を訪れることになりました。そこで私は、施設を利用する子ども達や、大人のみなさんと、様々な出会いをし、スタッフとしてそこで働くようになりました。そこは聖公会の施設でしたので、わたしはチャペルに通うようになり、洗礼を受けました。

あの時の、手を差し出してくれた方との出会いがなかったら、私は今、ここにいません。出会いの不思議さを思います。

詩人・塔和子さんの詩に、「胸の泉に」という作品があります。

「人はかかわることからさまざまな思いを知る/子は親とかかわり/親は子とかかわることによって/恋も友情も/かかわることから始まって/かかわったが故に起こる/幸や不幸を/積み重ねて大きくなり/くり返すことで磨かれ/そして人は/人の間で思いを削り思いをふくらませ/生を綴る」

わたしは自分の胸の中に、施設や教会で出会った、たくさんの人達の面影があることを感じます。そしてそれらの人達が今も私を励まし、支えてくれていると、実感しています。

みなさんは今、子ども達にかかわり、共に生きるための準備をしています。これから磨かれていく、宝石の原石として、一生懸命に毎日を送っています。これからたくさんの人と出会い、たくさんの人と別れ、喜び、泣きながら生きていくことでしょう。それらすべての出会いは、みなさんの「胸の泉」を豊かにしてくれます。いつか、気付く時が、必ず来ます。「あの、からし種のような小さな出会いが、私を深く豊かにしてくれたのだ」と。

みなさんも自分の「胸の泉」に、たくさんの人の思いを集め、そして他の人の「胸の泉」に、たくさんのものを手渡して、心の広い、大きな人になってください。その木陰で鳥が巣を作り、休めるような、深い思いを持った人になってください。(大和孝明さん:中部教区センター職員)

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